DATE
2018年09月28日
GBJアドバイザリーボードメンバー 豆成 勝博
■ 日本のホームセンターの歴史
日本のホームセンターの生い立ち
日本においては、約45年前からホームセンターの出店が始まった。ヨーロッパ、アメリカを見て、日本にもホームセンターの時代が来ると判断したのだ。始めたのは材木屋、米屋、ガソリンスタンド、建材屋など様々である。当時は地元商店を保護する政策が強かったが、自由化の流れにより、大店法という法律が出来、その後、規制緩和が進んだ。しかし、他にもいろんな規制や縛りがあった。お酒の販売が出来ない等である。また、建材ルートでは、メーカー→代理店→販売店→工務店・工事業者等と、あらゆる業種で強力な商売のルートが出来ていた。
日本におけるホームセンター業態の変化
日本の文化は、当時も今も大きな意味でDIYの文化ではないが、当初、各社ともDIY中心のホームセンター業態を創った。大店法で200~300坪と大きな店がつくれるようになり、DIY中心で展開し家電・カー用品、日用品などを置き出した。これがお客様に受けた。ワンストップショッピング+ディスカウントで、近郊、更には遠方商圏からお客様が押し寄せた。ホームセンターと言いながら、DIY中心からバラエティ型へ変化し、業態が創られてきた。2000年の大店立地法施行後は、GMSやカー、家電、ドラッグ等のいわゆるカテゴリーキラーと呼ばれる専門店が更に大量出店された。本来、ドラッグがホームセンターの競合店になるはずがないのに、それがホームセンターの競合店になった。それはホームセンターの本来の業態からバラエティ化していったからである。
DIY文化におけるアメリカと日本の違い
ホームセンターにおいても、DIYを強化してきた。店舗での実演や普及活動である。しかし、アメリカのDIY人口に比べ、日本はあまりDIY人口は増えていない。アメリカの歴史を考えた時に、アメリカは開拓の歴史である。自分達で家を造り、自分達で家を直して来た。それに対して、日本は最初から家を建てるのは大工さん、壁は左官屋さん・・・と決まっていて、家を自分達自らで、という文化は日本にはない。これは文化・歴史の違いである。
欧米と日本の住宅事情の違い
日本における昔の家は貧弱で品質が悪かったが、今は品質の良い家が増えている。一方、アメリカは100年住宅、ヨーロッパにおいては何百年ももつ家である。当然ながら使っていると設備は消耗するから、家の駆体が良ければ消耗品を取り替えるということになる。また、欧米においては自分達で手を加えることによって、家の価値を上げられる。日本は、買った家の価値が上がることは現在においてもない。すなわち、家に価値がないのである。戦後30~40年の高度成長期を含めた住宅では、家の設備が壊れたらどう考えるか?・・・家を建て替える・・・と、考えるのである。阪神淡路大震災では、駆体のしっかりした家は残った。残った家はそれ以降に建てた住宅である。1990年代以降は高品質の家がどんどん建てられてきた。50~100年住宅だ!昔の30~40年住宅から50~100年住宅に変化した。高耐震、高気密、高断熱性の基礎を含めた優れた住宅である。 そうなると、日本でも家の設備が壊れたら、家を建て替えるより設備を交換しようとなる。そうなってくると新築は減少し、リフォームに使う金が大きくなる。
アメリカのベビーブーマーJr世代の価値観
日本でいう団塊の世代であるアメリカのベビーブーマーは自分達で家を修理してきた。ホームセンターへは修理用品を父親が買物に行った。そのため、店は父親向けのつくりで、女性には行きづらい店であった。ところが、ベビーブーマーJrの世代は価値観が変ってきている。時間の価値を大事にするのである。家の修理にかける時間を他の有効なものに使いたいと考えるのである。そうなると、今までホームセンターに父親が買いに行っていたのが、そうでなくなってくる。どの家庭でも家の内装に対する主導権を持っているのは母親の方であることには変わりがなく、この母親がホームセンターへ行くことになる。ホームセンターへ行って修理用の商品を選び、修理は業者へ依頼するのである。
アメリカと日本のホームセンター市場規模
アメリカの建材市場は約34兆円でホームセンターがその約6割の約20兆円を取り込んでいるのに対し、日本では約6兆円の建材市場規模に対しホームセンターでのHI (住宅設備・資材とリフォームサービス)の取り込みは約2割の約1兆円しかない。ホームセンターの市場規模ではアメリカの約26兆円に対し、日本は4兆円とその1/6の規模。アメリカのホームセンターはホームデポとロウズの2強の売上高がホームセンター市場規模の約7割を占め、一方日本は上位9社で売上の約6割と、まだまだ寡占化が進んでいない。人口、GDP、新築着工数の大きさを考慮すると日本はアメリカの約4割前後の市場規模と推測できるが、建材市場規模が1/6、ホームセンター市場規模が1/6と、日本はHIをはじめ潜在的な需要がまだまだ大きくあると推定される。
日本のホームセンター市場の変遷
ホームセンター業態は80年代から90年前半にかけて大きく成長したが、その後は成長が鈍化。ホームセンター市場の市場規模は約4兆円であるものの、近年はドラッグストアや家電量販店、CVS等の他業態にマーケットを奪われてきたことにより成長率は限定的、それらはホームセンターの業態が出来上がっていないことの裏返しである。
ターゲットとする市場規模
日本のホームセンターの市場余地は、ホームセンター市場の4兆円に加え、建材(住宅設備・建材・金物・工具他)市場6兆円とリフォーム市場6兆円をターゲットとすることで大きな市場余地があると考える。
ホームセンターとして目指す業態
ホームセンターは一般向けのDIYをベースとしてプロ向けの建材・資材供給を進めているが、まだまだ業態としての確立に至っていない。従って、バラエティ型から真のホームセンター業態へ大きく舵を切っていくことが急務である。そのためには、以下の業種・業態を果敢に取り込むことが必要である。
●HIへの取組み
●リフォームへの取組み
日本のホームセンターのHIの取り込み
直近の日本のホームセンター市場が4兆円弱の横ばいで推移している中で、HI商材は年々伸び、直近では大きく構成比が上がり、HI比率は2012年度の16.9%から17年度は26.2%と、大きく構成が上がってきている。一方、ドラッグストアや家電量販、CVS等の台頭により一般商材は年々その構成比が下がっている。
リフォーム市場の推移
ホームセンターが対象とする狭義のリフォーム市場は直近では約6兆円で推移しており、このリフォーム関連の取り込みが、今後のホームセンター市場拡大の一つになると考える。
- 今後の展望
HI商材を基軸としたホームセンター業態の確立
バラエティ業態ではなくHIを主とした本来のホームセンター業態を確立させ、DIYを含め潜在需要を掘り起こす。
ブルーオーシャンのホームセンター業態を創り上げるには、HIやリフォームの取り込みが不可欠。現在のホームセンター市場4兆円を5兆円・6兆円に成長させる鍵となるであろう。