DATE
2019年11月25日
業界動向
サブスクリプションとは継続的なサービスの対価に顧客から定期定額料金を回収するビジネスモデルである。同ビジネスにおいて日本を先行しているアメリカでは、2017年11月にMcKinsey Analysisが行った約5000人に対するオンライン調査によると、消費者のうち15%程度がサブスクリプションにて製品を定期的に購入(又はレンタル)しているとの報告がなされており、その後更に拡大しているものと思料される。
国内の市場規模※に関しては、㈱矢野経済研究所によると2018年度はエンドユーザー支払額ベースで5,627億3,600万円と発表されている。同調査によると、本市場は2023年までに8,623億5,000万円にまで成長することが見込まれており、特に早い段階から所有からサービス利用へと転化をすすめているアパレル分野の成長がサブスクリプションビジネスを牽引している。
※ 市場規模は以下8市場の合計金額を表す
①ファッション系定期宅配 ②ファッションサービス(但し①を除く) ③食品系定期宅配
④飲食サービス ⑤生活関連 ⑥住居(シェアハウスやマンスリー系賃貸住宅は対象外)
⑦教育(但し通信教育は対象外 )⑧娯楽(月額定額で利用できる音楽と映像サービス)
旧来より新聞の定期購読やスポーツクラブなどでは一般的な形態ではあったものの、昨今では音楽のストリーミングや映画の見放題等のデジタルサービスを始め、食料品等の定額宅配や、貴金属・時計やバッグ、ファッション、車等のレンタルなど様々なジャンルに裾野が広がっている。本項では特にレンタル式のサブスクリプションビジネスについて記載を行う。
顧客にとっての定額レンタルのメリットは、高額品(バッグや時計等)の場合、安価な料金でブランド品が気軽に使用できることが挙げられるが、然程高額ではないもの(洋服等)であっても事業者の独自のサービスが顧客に受け入れられ、魅了するケースも散見される。
例えば、スタイリストによる自分好みのコーディネイトに合わせたファッションを提供するサービスや、レンタルしたものを気に入れば格安で購入(または複数期間のレンタルにて取得)できるサービスがこれらに当てはまる。
貸し手にとって重要となる留意事項
- レンタル式のサブスクリプションビジネスの場合、基本的に所有者の変更が起こらないため、一定時点で資産を処分しない限り経年が進み、また賃貸による品質劣化も起こる。
そのため、事業者の資産保持に対する姿勢や、如何に古い資産を処分し、新しい在庫に切り替えているかをビジネスモデルとして正確に把握することが肝要となる。 - 個別登記が可能な資産を除き、レンタル中の資産に関しては登記が及ばない可能性が高い。とは言え所定の保管場所に保持されている資産はビジネスモデル上キャッシュを生み出さず、また長期に渡り保管状態が継続しているものは不人気であることを示唆するため、処分した際の換価価値も低くなることが多い。よって、レンダーは登記された保管場所にある資産と、賃貸中の資産のバランスを注視する必要がある。
- サブスクリプションの対象となる資産が高価な品の場合、換金性が極めて高い商材となるため、紛失・盗難・横領に対する事業者のリスク対策が十分であるかを見極める必要がある。一方で、事業者がリスク対策のために修復が困難となる加工(刻印等)を施している場合は、処分時の換価性が下がることは否めない。
換価時における留意事項
- 当該事業の資産を換価する場合、多くの場合は市場(オークション)での換価を想定することになる。その際、同業者から見て不自然な量の出品は価格の下落をもたらす要因となり得るため、一箇所のオークションに全商材を投入するのではなく、敢えて複数回に分けて出品することにより、不自然さを軽減する等の施策を講じる必要がある。
- レンタル後の資産は、商品状態によって換価率が変動する可能性がある(家電等については動作確認等も必要となる)。