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デジタル競争時代で勝つBIの導入

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DATE
2020年09月30日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン バリュエーション部 マネージングディレクター 帥 暎琦 

■ DX –デジタル・トランスフォーメーション

ITツールの活用だけでなく、ビジネスモデルも根本的に変革させていく概念がDX(デジタル・トランスフォーメーション)である。現在の日本は新型コロナの感染拡大によるITインフラの再構築及び利用拡大をはじめ、菅新総理が本格的に打ち出した『デジタル庁』の創設、ITシステムの『2025年の崖』(DXが進まなかった場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる危機)等、デジタル革命が一刻も早く求められる状況である。IMD世界競争力センターが2019年9月に発表した『2019年世界デジタル競争力ランキング』によると、全63ヶ国のうち、日本は中国に抜かれ23位となり、アジアの近隣諸国と比較しても『デジタル後進国』に位置付けられると言わざるを得ない。

このような状況の中、企業各社は社内に眠る膨大なデジタル資産を有効活用していくことがこれからの時代で勝ち残っていくために必須であり、これを可能にするのが『モダンBIツールを活用したBIシステムの構築』である。

BIの業界構図

BI(ビジネス・インテリジェンス)は事実(データ)をベースとした支援システムを使用した、ビジネス上の意思決定を進化させるための概念と手法と定義される。言い換えれば、“データを価値のある『デジタル資産』に変える”と解釈できるが、データそのものは数字や文字列の羅列であると同時に、まだ情報としての役割を果たしていない存在である。人間が正しく理解するためにはデータを”情報”に変換する必要があり、その媒体となるのがBIツールである。

下図はITコンサル最大手のGartner社が2020年2月に発表したBIツールを提供するベンダーの業界構図である。当該資料は毎年発表されており、横軸に『ビジョン』、縦軸に『実行力』を定義し、Gartner社による評価でBIベンダー各社が「業界リーダー」、「チャレンジャー」、「先見者」、「ニッチ・プレイヤー」にポジションニングされる。

とりわけ日本において知名度が高いのは業界リーダーのMicrosoft、セルフサービスBI*1の先駆者のTableau、独立系BIベンダーのQlikの3社であるが、このうちMicrosoftが提供するPower BIはコスト、ツールの機能性及び柔軟性、クエリ・パフォーマンス(BIダッシュボードの反応速度)、接続可能なデータソース数、Officeアプリケーション及びMicrosoftが手掛ける他のサービスとの連携等において、BI業界において他社を大きく凌駕している。

BI導入によるビジネス上のインパクト

BIを導入する最もシンプルな理由は、既存事業で何がどのような原因で起こり、どのように対処すれば良いかを次のアクションとして決断することである。勘に頼る経営ではなく、事実(データ)をしっかり把握することで当事者全員が同じ情報をリアルタイムで共有できるIT環境の構築が重要な課題となる。その意味で、データの可視化や自動化、アナリティクス*2の活用を目的として開発されたBIテクノロジーをいち早く導入することは、デジタル化が急速に進む今のビジネス社会において急務と言える。

BIユーザーや開発者、BIベンダーのリアルな声を実際に反映したBIサーベイを毎年実施しているBARC(Business Application Research Center)によると、2019年時点でBIを導入したことで企業が得られるメリットは主に以下の11個であり、これらは更に「意思決定」、「競争力」、「マネタイズ」の3つに集約できる。BBI(Business Benefits Index)*3はBARCが開発したビジネス上のインパクトを数値化したものであり、このスコアが高いほど、BI導入によって企業が享受できるメリットが高いことを意味する。

  • 意思決定 
    『意思決定』として分類されるのは①、②、③及び⑤の4つ、平  均スコアは7.3/10である。
    IT活用によるデジタル化された社会で勝つためには、正しい意思決定を迅速に行うことや信頼性の高いデータを基に意思決定の最適化が必要であり、これら4つの項目はまさにBIを導入すべき理由の典型例である。信頼性の高いデータを基とする意思決定に絡むビジネス上のメリットとして、迅速かつ正確なレポート・分析・計画策定に加え、データ品質の向上によって、より優れたビジネス上の意思決定が可能となることが注目に値する。BIテクノロジーは意思決定の最適化をサポートすることが従来の目的であることから、この分類におけるBBIスコアが最も高くなるのは必然であると言える。
  • 競争力 
    『競争力』として分類されるのは、④、⑦、⑧の3つ、平均スコアは5.4/10である。企業が競争力を向上させるためには顧客満足度の改善はもとより、自社従業員の満足度を高めることが非常に重要であることをBBIの結果が示唆している。なお、顧客満足度については、80%の回答者がBIやアナリティクスの活用により顧客満足度の向上に繋がったと回答しており、従業員の満足度向上は86%の回答者が重要であると回答している。
    とりわけ、BIを導入することで人事部門は従業員のモチベーションの低下をいち早く把握することで従業員退職率の改善に繋がると信じている。
  • マネタイズ 
    『マネタイズ』として分類されるのは、⑥、⑨、⑩、⑪の4つ、平均スコアは4.3/10である。『データ・マネタイゼーション』とは、入手可能なデータを分析することによって、測定可能な経済的便益を生み出すことである。BIやアナリティクスを活用して、データを基にマネタイズすることは近年ますます重要なことになりつつあり、この中には収益の向上のみならず、効率化によって削減された費用も含まれる。例えば、BIを活用することで出荷ルートの改定や燃費の削減、出店先の商品構成や金額の見積もり等をリアルタイムで割り出すことが可能となる。一方、自社活用しているBIシステムによって蓄積された知識・経験を“ソリューション・サービス”として提供したり、データ自体を外販することで売上の増大に貢献できる場合もある。

このように、BIを導入することは必ず何かしらのビジネス・インパクトをもたらすことになるため、中長期的なIT投資として優先すべき重要な戦略の1つであると言える。

■ GBJによるBI導入の特徴

GBJは2019年6月より、BI powered by GBというBI導入支援ソリューションを提供している。まさに前述した『データ・マネタイゼーション』の1つとして、GBJが有する動産に対する知見(在庫及び設備評価、在庫換価ソリューションの提供等)を基に、BI導入によるデータの可視化・分析プラットフォームの構築といった入口戦略だけではなく、企業ニーズに合わせた“見るべきKPI”の設定や有形資産に対する出口戦略(例:適正在庫の算出及び在庫換価ソリューションの提案等)も提供することが可能である。

BI導入支援のプロセスは下図の通りであるが、GBJは前述したBI業界においてトップであるMicrosoft社が無償で提供しているPower BI Desktopを使用して開発を行っている。現在のモダンBIツールの殆どが、「データ・ディスカバリー」という機能を有しており、大量のデータから迅速にあらゆる角度から「何を見るべきかを「問える」仕組み」を構築できることが特徴であるが、Power BIはその中でも頂点に位置するアプリケーションであり、Officeやクラウド環境との連携はもちろん、ビジネスユーザーが使い慣れたExcelとの親和性が非常に高い。

GBJは対象企業が保有するあらゆるデータソースからデータをクレンジングした後、モデリング及びKPIの設定やデータの可視化を行い、顧客のニーズに合わせて社内での共有環境を構築していく。オンプレミス開発はPower BI Desktopを用いて顧客に対するヒアリングをベースに要件定義を決め、レポート(ダッシュボード)のクエリ・パフォーマンスが最適化になるよう、アジャイル開発で進めていく。その後、レポートを社内の各部署で共有(配布)するためのノウハウやメンテナンスに関するアドバイスを行いつつ、BIを使用するための社内トレーニングも実施していく。GBJの役割はここまでであるが、レポートの共有が必要な場合、Microsoft社が提示する有償プラン(例:月額1,200円/税込)から必要なライセンス数を購入することになる。

■ BI導入のサクセス・ファクター

最後にBI導入を成功に導くための成功要素を下記に挙げる。BI導入は下記a~cの当事者が関わることになるが、最終的には導入先企業の内部事情に左右される。

a) BIベンダー(BIツールや共有環境の提供)
b) 導入支援業者(第三者による導入支援が多い)
c) 導入先企業(BI導入を検討している企業)

上図の通り、BI導入に際しての成功要素は4つあり、以下は各要素の概要である。

①データ運用成熟度
BI導入を阻害する最も大きな要因の1つが、『データ運用成熟度』である。IDC Japanが2020年6月に発表した「国内企業のデータ運用成熟度」によると、「データ運用の仕組みの大部分が未整備な状態」や「データ運用の仕組みを整備している途上であるが、改善点が多く残っている状態」の割合は調査対象全体の約6割を占める*4ことが判った。BI導入に際して必要なものはデータであるが、ソースデータが複数のシステムに散在し、必要なデータ抽出が困難を極める場合や、ビジネスロジックが導入企業の中でも不明確だった場合、BIを導入する前にこれらの問題を解決する必要がある。事実、これが原因でBI導入に踏み切れない企業が非常に多いことが弊社の経験でも多数見受けられる。

②マネジメント層
導入先企業において、BI導入を支援してくれるマネジメント層の有無がBIをスムーズに導入できるかどうかを左右する場合が多い。BIテクノロジーは、その利便性を理解できない間、ビジネスユーザーにとっては敷居の高いものである。また、現状維持を好む従業員にとっては自分たちの“コンフォートゾーン(居心地が良いと感じる心理領域)”を壊すものであるため、導入に向けての強力なリーダーシップが必要となる。企業が成長するためには運用効率や従業員のITリテラシの向上が必須であり、そこにトップダウン型のリーダーシップを持ち込めるかどうかが重要となる。

③テクノロジー・リーダー
BI導入を支援してくれるマネジメント層と同じく重要なファクターが『テクノロジー・リーダー』である。マネジメントによるリーダーシップが社内を「データカルチャ」に変えていくものであるとすれば、テクノロジー・リーダーはBIを社内に広める存在である。概して、テクノロジー・リーダーはITに興味を持っているビジネスユーザーや経営層、ITシステム担当者等が該当するが、テクノロジーに対しての興味や情熱を持っている人が率先して、社内へBIを浸透させていくことが望ましい。

④トレーニング
継続的なトレーニングは従業員のBI使用に対する習熟度を高めるだけでなく、BI浸透率の向上にも貢献する。マネジメントやテクノロジー・リーダーの支援が必要となる場合が多いが、BI導入によって削減できる時間をコスト換算できれば、好ましい投資であることが判明するはずである。

以上がBIを導入するにあたってのサクセス・ファクターであるが、デジタル競争時代において勝ち残っていくための投資を一刻も早く決断できる企業が競合他社との差を広げ、中長期にわたって繁栄していくであろう。

 

*1:ビジネスユーザーがIT部門の負担を可能な限り抑え、自分たちで必要な時にアクセスできるデータを集計・加工・分析することを可能にする概念やBIツールそのもの

*2:様々な分析手法を駆使し、データに潜んでいる特定のパターンや相関関係などの知見を抽出すること

*3:  BBIの詳細な算出ロジックは以下を参照

  https://bi-survey.com/wp-content/uploads/2019/10/Sample-KPIs-and-methodology.pdf

*4:  出所:https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46424420