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コロナ禍におけるホームセンターの動向と今後

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DATE
2020年12月07日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン リテール

マネージングディレクター  岸本 真一郎

 

■ 新型コロナウイルス特需で各社増収増益となるホームセンター業界

消費費の生活パターンを大きく変えたともいえる「新型コロナウイルス」。
企業においては、初めてと言ってもよい事態に厳しい決算発表をする企業が相次いだ。記憶に新しいところでは、レナウンのような老舗企業が2020年5月に民事再生法の適用を申し立て、民事再生手続きに入っていた。しかし10月30日に民事再生手続廃止決定を受け、破産手続きに移行した。負債総額は138億円となり各小売業にも激震が走ったはずだ。
今回の新型コロナウイルスによる影響は、必ずしもすべての業種がダメージを受けたわけではなく、業種よっては、特需となった業種もある。その中の一つがホームセンター業界である。
上場ホームセンターの2021年2月期第一四半期決算を見ると、新型コロナウイルス感染拡大に伴う特需で軒並み増益となった。
主な要因をみると販売管理の減少(折り込みチラシ削減・イベント費用圧縮)によるものである。
業界大手の一角であるコーナン商事は、損益項目において過去最高を更新している。これは、ホームセンターがコロナ禍における生活インフラとして広く利用されたことが大きいといえる。消費者の購買行動に大きな変化が起こり、多様なニーズに答えことができるホームセンターヘ集中した表れといっても良い。

すべてのホームセンターが勝ち組だったのか?

市場規模で4兆円が見えたホームセンター業界であったが、コロナ禍の渦中ですべての事業者が「勝ち組」となったかと言うと疑問である。
天候不順や消費増税の影響から収益低下があると思われたところに、「コロナ特需」で足元の業績が回復。一見すると回復傾向にあるが実際はそうとも言えないところもある。
余談であるが、各業界で勝ち組業界と負け組業界があるといわれているが、その勝ち組業界の中でも“勝ち負け”があったことを認識して戴きたい。更に、負け組業界といわれている業界でも本当に「新型コロナウイルス」の影響なのかをしっかりとご自身の目で見極めて頂きたい。
一つ例を挙げるが、家電業界も「勝ち組」と言われている業界であるが、その中でもレールサイド展開企業とロードサイド展開企業で業績に明暗が分かれた。更に、販売が好調に推移したカテゴリに偏りがあり、アフターコロナ時代までに課題を残す結果となっている。これは、ホームセンターも業界も同様のことがいえる。
各社の月次速報ベース2020年4月と5月での売上が対前年と比較し下回った企業が存在した。当業界の上場企業では3社ほどあった。非上場まで調べるともっとあったかもしれない。なかなか安心できるとは言えない状況であるといえる。

今後進むあろう業界の合従連衡

市場規模としては、4兆円が見えてきたホームセンター業界。横ばい傾向からついに脱却かと思われるが実はそうでもない。カインズとコーナン商事の伸張が著しく、この2社で業界の売上高を600億円ほど引き上げている。特に、コーナン商事はコメリを抜き業界3位となった。その要因は、M&A(合併・吸収)が大きい。
業界でもホームセンターを運営する企業は140社となり減少傾向が続いているのである。消費増税後には、M&Aが起こりやすい業界であったがその流れはコロナ禍の中でも加速しそうである。これは、熾烈化する業界トップ争いに、より一層拍車がかかるといえ、売上の寡占化が進むと言える。現状を見ても売上高1,000億円以上の企業シェアが65.5%程度ある。中堅以下は、独自路線の追求・M&A、廃業などが起こりうるといえる。一定の規模がある企業は、独自路線やM&Aなどの選択肢があるが、小規模運営の企業は廃業などの選択をせざるを得ない。事実、社数の減少がいまだに進んでおり、上位企業のシェアが高い。
中堅ホームセンターも既に独自路線を目指している企業が出ている。静岡のエンチョーはプロショップを立ち上げた。栃木のカンセキについては従前「WILD-1」事業が業績を牽引しており、本体を支えている。どこかのタイミングでホームセンター事業を考える必要あるかもしれない。
大阪のロイヤルホームセンターが埼玉の自動車工具・整備用品のワールドツールを買収によって子会社化し、既にホームセンター内の店舗に出店を進めシナジー効果を図る準備をしている。しかし、心配なのはローコストで出店していたワールドツール側に負担にならないことと、独自のSPAや仕入れが強みだった当社であった当社が、同質化を行いその良さがなくなると一気にシナジー効果どころではない。その辺をロイヤルホームセンター側がどこまで理解できるかが今後の焦点といる。

今までは、DCMホールディングスが業界の受け皿の役割を担っていたが、コーナン商事、アレンザホールディングス、更にアークランドサカモト陣営などの台頭により選択肢の幅が増え今後より合従連衡が進むといえる。

勢力図が変わるのか「アークランドサカモト」と「LIXILビバ」、さらに「島忠」

コロナ禍の今年6月に衝撃が走った。特大の大型M&Aの発表があった。アークランドサカモトがLIXILビバを買収すると発表、一気に業界5位となるのである。両社においてエリア重複が少なく一気にナショナルチェーン化が図れる。更に、「新しい仲間を募るのはやぶさかでない」とコメントも発表しており、今後業界の再編が進むきっかけとなるといえる。
アークランドサカモトとLIXILビバの発表後にDCMホールディングスよる「島忠(埼玉県)」TOBのニュースがあった。順調に進むかと思われたところ、ニトリホールディングスによるTOB参戦が発表。島忠の魅力は出店エリアが少ない都内に店舗を持っていることである。既に単独では厳しさがあったので、どちらの話も島忠にとっては良い話だと思える。家具事業も苦戦しているところで、ニトリ陣営からの申し入れは非常に、家具事業にメリットであり、立て直しが図れそうだ。ニトリ陣営が濃厚(2020年12月7日時点)であるが、今後どちらの陣営に行っても、業界のインパクトは大きいと言える。