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関西経済の今後の可能性と課題

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DATE
2023年03月09日

GBJアドバイザリーボードメンバー 黒松 弘育

 

はじめに

私が生活している関西エリア、とりわけ大阪・神戸は現在では地方都市化しておりますが、戦後の昭和の時代では東京圏とともに経済と文化の発信できる地域でした。政令都市の大阪市と大阪府の足並みが揃わず低迷しておりましたが、近年になり少しずつ様々なプロジェクトが立ち上がり、活気が戻ってきています。そんな最近の関西経済の状況と今後の可能性や課題について考察いたします。今回はマクロ的な視点で関西経済の動きや人口動態等について述べさせていただきます。

 

■ 関西経済の状況

まず関西経済の状況ですが、コロナ前まではGRP(域内総生産)のシェア推移は、前回の大阪万博の行われた1970年代をピークに低下傾向が続き、関東地区と大きく差が開いたばかりか、中部地区にも抜かれている状況です(図表1)。また関西地区の1人あたりの県民所得は、バブル期以降低迷し関東地区や中部地区との差が広がってきています(図表2)。

関西の景気ですが、大阪府内総生産をみると新型コロナウイルス感染症拡大前までは微増で推移していました。一方景気動向指数は、リーマンショックで大きく落ち込みましたがその後持ち直している状況です。また、現在の大阪府内の総生産は40兆円程度でここ数年は推移しており、東京都の4割程度の水準で愛知県とほぼ同等の水準に落ち着いています。新型コロナウイルス感染症拡大前では、関西の大阪経済は、2008年のリーマンショック後に急速に落ち込んだ後は2015年からのインバウンドの飛躍的な増加なども背景に穏やかな回復基調が続いており、雇用環境も大きく改善してきました(図表3、4)。

しかしながら新型コロナウイルス感染拡大により、関西経済は2020年から急速に悪化し、好調であったインバウンド需要はほぼ蒸発しました。しかし、コロナの一般化が進むにつれ、個人消費の弱さ等依然として厳しい状況が続いてはいますが、雇用環境も下げ止まりが見られるなど、投資や生産活動も含め持ち直しの動きとなってきています。その結果、人口動態の変化も見られ始め、北摂周辺の人口は増加に転じました。今後は、新型コロナウイルスの「5類」移行が正式決定されたことを受け改善が予想されますが、新たな変異株による再拡大の可能性、ウクライナ問題に発する資源高に伴う世界経済のリスクの高まりも予想される為、更なる生産性向上を伴う所得改善を行い消費の拡大に繋げ、関西経済の回復を図る事がとても重要です。

一方で、関西の人口の推移(図表5)については減少が続き、大阪郊外、奈良の南部、和歌山は特に厳しいものがあります。全体からみれば、関西の総人口は2000年をピークに減少を続けています。特徴的な事は、高齢者割合が増加しており、働き手である生産者人口が激減している中、関西圏から首都圏への人口流出も増えている状況です(図表6)。

 

■ 今後の関西経済の可能性・ポイント

そのような流れの中で、今後の関西経済の可能性・ポイントですが、関西は他の地域より速い人口減少が進んでおり、少子高齢化の縮図になっています。一方でマーケットは縮小傾向にあるものの依然として大きいシェアを確保していることから、少子高齢化対策の先進事例を生み出すことができる可能性があります。量より質の転換も可能になります。関西の大企業が東京圏に拠点を変えていく中で、独創的な技術を持つ中小企業群が活発に活動し、大学や研究開発拠点も数多く集積して次世代の課題を解決に結びつけていけます。それは、関西特有の生活者目線の商品を生み出してきた文化、土壌によるものです。

また、海外との取組では今後の成長余地が高いアジアと強い結びつきがあります。観光立国としても、京都・奈良に代表される観光資源を数多く持っており、古代より貿易と観光で関西とアジアは深い繋がりがあります。そのような背景もあり、最近では多くのプロジェクトが動き出しています。