DATE
2016年04月01日
増え続ける半導体需要
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)によると、2014年の世界半導体市場は、製品ごとに多少の差はあったものの、半導体合計で見るとドルベースで前年比+9.9%、2011年以来で最大の成長率となった。金額ベースで見るとこれまでの最高であった2013年(3,056億ドル)を大きく上回り、3,358億ドル(約35兆5,000億円)、前年から約303億ドル増であった。日本だけがマイナス成長であったのは為替相場の変動が原因であり、実際には2014年の円ベースでの日本の半導体市場は、前年比+8.4%、金額では約3兆6,810億円と、2013年の+3.7%を大幅に上回る成長を示した。世界の半導体市場は、2016年以降も安定成長が見込まれる。
進行中の業界再編の波
成長が低下してきているパソコン、スマートフォン、タブレット端末に大きく依存し、調査・研究開発費の高騰もうけるなか、多くの半導体チップ製造メーカーは戦略的オプションの一つとして統合を模索している。主な2015年の大型買収案件としては、AvagoがBroadcomを370億ドルで、IntelがAlteraを約170億ドルで、FreescaleがNXP Semiconductorsを118億ドルで買収したことが挙げられる。さらにはWestern DigitalがSanDiskを190億ドルで、ON SemiconductorがFairchild Semiconductorを24億ドルで買収した。日本においては、ソニーは東芝大分工場のシステムLSI向け300mmラインの一部を約1.7億ドルで買収しCMOSセンサー向けに転用し、一方の東芝はNAND型フラッシュメモリーへの投資を行うと表明し、選択と集中を加速させている。
製造装置メーカーでは、米Lam Research社が米KLA-Tencor社買収を106億ドルで買収し、装置業界世界シェア2位となった。また破断とはなったが、同1位のアプライドマテリアルズと同3位の東京エレクトロンとの合併話しも大きな話題となった。このように半導体業界ではサプライチェーン全体で再編の波が押し寄せている。これは、先に述べた高騰する研究開発費に備えるためや単なるシェア争いだけでは語れない動向である。半導体業界における再編劇を引き続き注視する必要がある。
貸し手にとって重要となる留意事項
- 半導体製造装置の通常処分には、準備として除染作業を伴う設備が大半であり費用と時間を要する。工場全体の処分には1年以上を必要とする。
- 清算期間中も半導体製造装置は温度とクリーン度を保った環境下で保管する必要があり、この分清算費用が大きくなる可能性がある。
- 需要と供給により市場価格が左右され、業界全体も浮き沈みが激しいので、装置の価値は変動しやすい。
- 老朽化した200mmの装置は数世代前の加工技術を応用するIoT関連、MEMS、ディスクリート等の製造に用いられ中古市場が高騰している。
- 装置の種類とテクノロジーによって、技術の陳腐化の度合いも異なってくる。
多様化する半導体在庫の回収可能価値
多様化する半導体のニーズによって、半導体製造業における半導体在庫の種類は多岐にわたる。そのため、技術革新によるテクノロジーの陳腐化や販売先企業の業績停滞等により、過去の”花形商品”半導体が滞留在庫と化し、既存販売先に対して換価することが困難な場合も多い。半導体メーカーはこうしたリスクを軽減するため、オリジナルメーカーに代わって半導体の生産中止品の販売、生産継続、再生産を行うソリューションプロバイダー等に対して問題となっている在庫を販売することで、通常は廃棄処分となる在庫の換価価値の最大化を図ることが可能となる。