DATE
2018年05月15日
日本における業界動向
2008年の世界的金融不況を背景に「買い控え」が顕著となり市場規模が縮小に転じた以来、2010年で底打ちし、2013年の大手百貨店の都心旗艦店の大型改装効果、2014年の消費増税特需により回復に転じた。しかし、2015年は暖冬による重衣料が不振し、2016年はセール時期の分散化やインバウンド(訪日外国人客)需要の収束し、厳しい市況が続いた。
矢野経済研究所の調査によると、2016年の国内婦人服・洋品小売市場規模は5兆7,563億円で、前年より▲2.2%となった。 大手アパレル各社を中心としたブランド再編と、それに伴う百貨店や量販店(GMS)の売上不振等の影響により、特に、百貨店を中心販路とする大手アパレル上場各社では、ブランドや出店店舗の統廃合を進めており、市場全体を押し下げる要因になっている。
一方で、BtoC-ECの市場規模は確実に伸張している。インターネット、特にスマートフォンの浸透・定着により、 BtoCによる衣料等の購入が一般化し、EC化率(EC市場規模÷小売市場規模)が2016年に初めて10%を突破した。アパレル業界ではショールーミングが課題と言われてきたが、多くのアパレルブランドがBtoC-EC対応を進めており、市場拡大につながっている。また、催事会場の確保や従業員の動員が必要とするファミリーセールの代替手段として、EC販売は特に有効と考えられている。
貸し手にとって重要となる留意事項
- 商品在庫の経年情報は、評価上重要な指標である。ファッション性が重要視される本業界において、トレンドが絶えず変化する中、経年によるデザインの陳腐化が懸念される為、評価率の低下要因となる。
- 値引率(実売価vs定価)は、市場での受容性を図る上に有効な指標となる。定価の引上げる中、粗利益率の維持は値引率の上昇を意味し、設定定価が一般消費者に受け入れられていないことを匂わせる為、評価上不利に働く。
- 既存店の売上高は、当該ブランドの販売力を表している。開閉店が頻繁に行われる本業界においては、店舗数がブランド全体の売上高を大きく影響する。また、既存店に占めるリピーター客の割合が比較的高いと考えれる為、既存店の売上高の変動は、ブランド力の変化を間接的に表す。
- 本業界は季節性が最も顕著となる業界の一つである。季節(月)によって季節別の在庫構成が大きく異なり、季節外在庫の構成比により、評価率の変動が相応に上下する。GBJは、季節毎の評価率をモニタリングすることを強く推奨する。
換価時における留意事項
- 販路の確保が換価率を左右する最も重要な事項となる。ECによる販売は季節外在庫の換価に役立つ為、対象事業会社がEC販路を有する場合、当該販路が利用できるように関係者との取引関係を健全に維持させることが重要となる。
- 換価時に倉庫在庫をスムーズに移動できるよう、自社倉庫利用の場合は、従業員が確保されていること、営業倉庫利用の場合は、保管・入出庫手数料の支払に遅延等がないこと、を日頃にモニタリングすることが不可欠である。