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ホームセンターの在庫について

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DATE
2019年09月12日

GBJアドバイザリーボードメンバー 豆成 勝博

ホームセンターの現状

ホームセンターの市場状況
2018年のホームセンター市場は3兆9306億円とほぼ前年横ばい(微減)であった。直近では微増・微減を繰り返し市場はゼロ成長の時代にある。4兆円の壁を乗り越えられないのである。また企業数は189社と減少が続いており、逆に店舗数は増え続けていたが2018年は前年ほぼ横ばいの4303店舗(1店舗減)となった。新規出店よりも閉鎖店が増えたことによる。

HC業界の市場規模推移

売場面積と坪効率
2018年の売場面積は店舗数が微減になった事もあり4778千坪と微増となった。売場効率を示す坪効率は79.8万円と年々低下し続け歯止めがかかっていない。この事からもホームセンターの市場は完全に停滞期に陥っている事がわかる。

日本のホームセンター成長のカギ穴

売上構成比の変化
市場の変遷は4兆円弱と横ばいだが売上の商品構成には変化が有る。
2011年→2018年の商品構成はHI商品(DIY商品)が大きく増え逆に他業態(ドラッグ他)の競合商品である日用品・家電・インテリア等が下がっている。
すなわちホームセンター業態における一点の光が見えてきたのである。小売として競合に左右されにくい業態の確立である。

今後の市場環境と方向性

今後の市場環境の変化について
日本の総人口は2015年の調査で1.27億人と初めて減少に転じ、今後は人口減が続き2055年には1億人を割ると推計されている。また、新設住宅着工数も世帯数の減少や長寿命化等により2030年には現在の90万戸から55万戸にまで減少となる見込みである。
従って、ホームセンター市場はもとより日本の市場全体が縮小する事が考えられる。一方では高齢化や空き家率の高まり等でリフォーム市場の拡大が予見されている。政府の市場目標も直近の6兆円から2025年は12兆円の倍増としている。

ホームセンター全体の方向性と方策
以上よりホームセンター市場は日本の市場が縮小する事も合わせ、今後は更にブルーオーシャンへの業態の取組や各種方策によりホームセンター市場の拡大が急務である。その兆しはHI(DIY)商品構成等の変化であり今後のリフォーム市場への小売としての大胆な介入・変革が求められる。
それらを見据え更に多角的な方策を列挙してみると、まずはEC化・デジタル化である。amazon等のネット通販が急成長の中、欧米のホームセンターも積極的なEC化・デジタル化で成長の軌道修正を図っている。日本のホームセンターは出遅れ感があり一部のホームセンターでは取組を始めているが全体ではまだまだスタート時点に立てていない!また、リフォーム市場(HI)とEC化・デジタル化の関連も強く今後は強力な武器になることは間違いない。
商品力強化では、お客様の要望から取り入れた商品や新たな機能等付加した商品開発を自社で生産・調達するPB化やSPA化が進められている。メリットとしてPB等は差異化・差別化商品として競合に左右されない独自の商品作りでありホームセンター市場の成長には不可欠なものである。また、競合に左右されないがゆえに高粗利が見込める商品でもある。しかし、デメリットも多い。PB開発は品質責任や在庫責任を自社で負う事になり、更に過剰在庫や滞留在庫の割合が高くなる可能性もある。
客層では現状50歳から70歳台の比較的高齢のお客様が多く来店される。これに加え比較的少ない20歳から40歳台の若・中年層のお客様に来店頂く策に取組む事が課題となってくる。
また、プロへの取組が重要になっている。特にHI(DIY)商品は一般客はもとよりプロに利用頂く対策が必要となる。プロ向け商材の品揃えや取り置きサービス、掛売り等プロにお買い求めいただく環境作りが必要となる。
その他、日本市場が縮小する中では今後東南アジアを始めとする発展途上国などへの海外展開が期待される。
更に、日本のホームセンター市場を活性化・効率化させるためには業界再編を進め強力な体制を創り上げる事も重要と考える。

■ 各種方策と在庫の関係

PBについて
PB等はお客様のニーズを聞き付加価値型商品(差異化・差別化商品)をお客様に提供する事であると既に述べたとおりである。(NBで対応できるのであれば協働開発も有り)それにより事業体質(高粗利)向上も期待できる。下記ホームセンター各社は年々PBの構成比を上げておりお客様満足度向上と差異化・差別化に伴う事業体質向上を図っている。

各社在庫回転日数の変遷
しかしながら、ホームセンター全体の売場効率低下が示すように在庫回転日数の長さにも表れている。
下記表で示したようにホームセンター業界の在庫回転日数はジョイフル本田を除き総じて長くなっている。PB比率が高くなっている企業ほど在庫回転日数も長い傾向にもある。

商品別の荒利率と在庫回転日数
商品別の荒利率は日用消耗品を除き総じて高い。在庫回転日数はHI(DIY)商材が最も長く全体を押し上げている。また、続いてPB化の比較的高いインテリア・収納、カー用品・文具なども回転日数が長い。しかし、いずれも荒利率が高く交叉比率は悪くない。

■ ホームセンターの在庫の課題

ホームセンターはSKUが多く(10万SKU以上)全体の売場効率も悪く在庫回転日数が長い。
滞留在庫や過剰在庫の割合が高くなりがちで在庫に関する課題も多い。需要予測・販促・流通改革など各社は制度を高め努力する事で良い方向には向かっている。しかしホームセンターは様々な環境の基、総じて在庫に課題が多い。
過剰在庫・滞留在庫の悪影響としては廉価販売や廃棄の可能性が大きくなり収益を悪化させる。また、陳腐化や品質劣化によって商品の価値を低下させてしまう恐れがある。保管スペースも必要となり管理費用の発生、在庫維持の費用や付加価値の生まない無駄な作業等も発生し、在庫維持の費用が増加する。
従って運転資金(キャッシュフロー)を圧迫する要因の1つとなり滞留在庫や過剰在庫を減らし、出来れば現金化したいニーズも多いと考える。