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消費増税後のホームセンターの動向

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DATE
2020年01月28日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン ソーシング&マーケティング

マネージングディレクター  岸本 真一郎

 

2019年の大型イベント「消費増税」

2019年の大型イベントと言えば、「消費増税」と言えただろう。過去、何度か実施されたイベントであるが、増税前の需要刈り取りがあり、その後増税後の需要低迷がパターンとなっている。しかし、今回ホームセンター業界以外にも増税後ヒアリングを行ったが、過去と比較するとあまり大きな駆け込み需要はなかったように感じる。

ホームセンター業界を触れる前に、他の業界について触れてみよう。

家電量販店はどうであったか。過去、増税やエコポイントなどの政策に大きく需要が左右された業界であるが、出足は遅かったようだ。2019年の年明け以降は、どちらかというとオリンピック需要に近しいトレンドで推移し、増税間近で過去の増税前傾向と同様なトレンドであった。

流石に、学習をしている業界だけあって、商品確保なども各社しっかり行えたと回答があった。後半は、商品を持っていれば、それだけ売上が稼げたとのコメント通り、前年の2~3倍で各社推移していた。過去、国の政策で大きく売上がブレ、苦しんだ経験を生かした業界と言える。

増税が近づくと高額品や嗜好品の業界も好調に推移する。

その典型では、百貨店業界があるが、増税後の動きをみると決して良かったとは、言いにくい。大手から中堅などの動きをみると「閉店」や「廃業」などのキーワードが増税後目に入る。確かに高額品の動きはあったようだが、そもそものビジネスモデルに限界がきているところは、報道にあるような流れとなっている。

しかし、しっかりと足元を固めた戦略で対応しているところもあることを付け加えておく。そのような、百貨店は、数は少ないが勝ち組として今後も残るだろうが、その他の百貨店はさらに厳しくなるだろう。一つキーワードをあげるとすると「考え方(構造)を変え、新たなステージに行くこと」を薦めるが非常に難しいと言えるし、過去の栄光と決別をしないと実現するのは難しいだろう。

専門店などでは、スポーツ量販やアウトドアなどで外的要因(災害)が強く、駆け込み需要は本当に直近で起こったようだ。逆に、駆け込みが小さかったため、その後の反動も小さかった。

当業界の課題(問題)は、災害に尽きる。2019年は大型台風などもあり、本当に大変であったが常に外的要因を想定にしている業界だけあり底堅い印象をうける。

逆に、前述の百貨店業界に近い所にあるのが、家具専門店である。

高額品を取り扱っているだけあり、増税前も駆け込み需要がそこそこあったようだが、その後の反動は、駆け込み需要と比較すると落差は大きかったようだ。

この業界は、ニトリ・イケアが注目されるが、それ以外でも堅調に経営をしている企業も複数あり、二極化が進んでいる業界と言え、増税でさらに明確化されたと言える。特に、同一用途の商品であっても価格レンジが広く、より価格帯や品揃え、さらには店舗の顧客層をしっかり分析しないと非常に厳しい業界である。

ニトリ・イケアの影響で「売れなくなった」と複数の企業に聞く。確かに今までの価格が通用しなくなってはいるものの、新たなプライスラインを見つけた企業は堅調である。しかしながら、ニッチな富裕層向けの価格帯を推し進めているメーカー・専門店はこれからさらに厳しくなるだろう。日本にも富裕層は確かにいるものの、このゾーンは、しっかりしたデータ活用なしに攻めてはいけないゾーンであり、安易に取り組みをしている企業があるのが残念である。

■ 2020年、ホームセンターの消費需要はどう動くのか

2019年消費増税前の個人消費については、①賃金の上昇、②消費マインドの改善、から安定的との意見が多かった。

先ほども触れたが、2019年後半には、消費増税があり、実質所得の低下が予想されていた。しかし、住宅や自動車の購入支援による押し上げから、実質的に駆け込み需要を換算すると例年通りであったと言える。

2014年4月に消費税率が5%から8%へ引き上げられた。これに伴い、3月に駆け込み需要が発生し、4月以降はその反動による買い控えが見られた。今回も同様の動きが予想されていたため、各ホームセンター企業もその準備に追われた。駆け込み需要は、耐久消費財を含め日用品などの日常的に使用する商品に向かわれ、特に、家電製品や消耗品を取り扱うホームセンターでは、在庫管理を中心に機会損失を発生しないよう取り組みがなされた。前回と異なった点を挙げると、駆け込み需要の期間が短かったと言える。

在庫確保をしっかり行った企業は確実に消費需要を捕まえたと言える。一点留意してもらいたいことは、ここで発生した需要に合致しなかった商品は、今後売れ行きがさらに鈍くなるので、早期処分を行い、また異なる需要発掘のための売場展開を行うことが今後の売上減の歯止めのために必要となるだろう。

粗利率の低下リスク

消費増税で起こる小売業のリスクは、粗利率の低下リスクである。

2014年の増税時では「総額表示方式」を多くの小売業が導入。当時の小売業の多くは、総額表示導入に伴い、表示価格の上昇を消費者に「値上げした」と勘違いされることを恐れた。そのため一部の有力企業が先行的に表示価格据え置きを打ち出し、競争上、同様の措置を取らざるを得ない企業が増えた。

過去の経験から、今回の増税時には各団体が価格表示を外税方式とすると発表、大手小売業も外税方式とする方針を発表したことにより落ち着くと思われたが、現実的にはそうではなかった。国の政策もあり中小企業に対する保護があったが、そこから外れる中堅企業や大手企業が、駆け込み需要の反動減に対する販促策として、価格据え置きや独自のポイント還元セールなどを実施し、粗利率に対して強い低下圧力となったと言える。

また、粗利率の高い業界は、販管費の見直しなどで対策が取れそうでもあるが、ホームセンター業界など粗利率の低い業界については、非常に深刻な問題である。売場面積も広く、また、取扱いSKUも多い。既にローコストオペレーションで展開しており、粗利率の低下を販管費などの削減で補うのは難しい。さらに、人件費高騰や物流費高騰などあり非常に難しい。そうなると、商品の原価引き下げなどを検討するが、ここは非常に規模の原理が働くところになるため、大手企業には望みがあるが中堅中小規模は非常につらい所である。

中堅中小になると、プライベートブランド(以下、PB)を大量に生産して値入率改善も難しい。もし、それをやるとなると大きな在庫リスクを抱えることとなり、CFなど別の個所に影響が及ぶだろう。PBを作るとなると、ホームセンター業界ではやはり1,000億円以上の年商が必要と思われ、安易に取り組み中途半端なPBで失敗した企業は後を絶たないことを考えると難しいと言える。

そうなると、アライアンスや共同仕入れの加速が今後進んでいくだろう。

20201月以降に業界再編が加速する

反動減は、金物・工具・家電など耐久消費財を中心に発生する。ホームセンターにおいて重要商材であるが、在庫回転率が低く、在庫資金負担の重い商材である。

そうした中、各企業は2月の決済資金調達に挑まなければならない。

一般的に小売業は、2月の資金繰りが厳しくなる。年末年始商戦を含む売上高の大きな時期の仕入れ代金を年間で最も売上高の小さい2月に支払う形になるためである。業態の特性上、運転資金(回転差資金)に乏しいホームセンターにとっては、2月は金融機関からのつなぎ資金が必要傾向となり資金繰りは非常に大変である。

しかも反動減によって売上の減少が著しい企業は、例年以上に厳しい状況で支払い期日を迎えることになる。このタイミングで、金融機関が事業苦戦先に対して“事業計画や再建計画“の提出を求めるケースが多々ある。

上記が決して経営統合に踏み切る意思決定のトリガーであるとは言いにくいが、過去増税前後には、イベントが起きることが多く、例えば、DCMホールディングスの原点となるカーマ、ダイキ、ホーマックの業務・資本提携(2003年2月)、DCMとケーヨーの資本業務提携の発表(2017年1月)があった。また、ダイユーエイトとリックコーポレーションの経営統合の発表も2016年1月にあった。偶然との見方もあるが、既に水面下で動いている企業もあると聞く。今後の各社の動向に注目をする必要があるだろう。