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中古機械市場の活性化が創り出すSDGs社会

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DATE
2020年08月31日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン 製造業担当

アソシエイト  武田 憲吾

■ 欧米で中古機械市場が成立する背景と仕組み

今から数十年前に、私はエンジニアとして新品の日本製機械の設置や修理で各国を飛び回っていましたが、中古の機械に関わることは殆どありませんでしたし、中古を購入したユーザーとお付き合いする事もありませんでした。今から考えると中古=悪という思いがありました。この嫌悪感こそが、日本において中古市場が日の目を見ることのない一つの理由になっていると思います。

欧米では機械は修理して長く使うものと考えられているので、装置メーカーだけでなく、サードパーティーエンジニアリング会社(以下サードパーティー)も多く存在しています。保守部品の入手も日本に比べると容易ですし、入手不可能ならば作ってしまいます。

サードパーティーは中古の(ボロボロの)機械を安く購入し、一旦全ての部品を取り外してフレームだけにして綺麗に掃除と塗装し、使える部品と新しい部品を取り付けて機械を蘇らせます。その後試運転し、問題が無ければ販売商品となるわけです。このリビルドされた機械の製造者はサードパーティーになるわけですが、元々の機械と形も性能もほぼ同じです。(※日本にもこの様なレトロフィットを行う業者は存在しますが、まだまだ工作機械や半導体機械のみです)

こういった機械を購入するのは中小の製造業に限られてはいません。世界的に有名な通信会社がリビルド機械を購入して使っていることを知り、メーカーエンジニアとしては複雑な思いをした覚えがあります。

このような背景が中古機械の流通を支えているので、エンドユーザーは故障修理や保守等の心配なく中古機械を購入でき、マーケットは活性化しています。残念ながら日本の装置メーカーの殆どは中古機械やサードパーティーに対して距離を取っているので、中古機械を購入しようと考えるエンドユーザーは多くありません。

次に、売主サイドから見た日本市場との違いについてです。不要となった機械は投資家から調達した資金で購入した機械(=資産)です。グループ会社も含めて再利用しないとなった機械は、売却して資金を回収し次の投資等に回すという考えが特に北米では根付いています。

機械の売却を手助けする様々なプロフェッショナルファームが存在しており、売却価格を最大にする為には十分な広告宣伝をして買手候補を募り、価格を競争させて売却する、という手法が取られています。売主が誰であるかを開示し、開かれた会場(またはインターネット経由)にて競争入札を行います。販売会に何人が参加し、誰がいくらで落札したのか、売主に買主ともに分かるので透明性があります。経営陣への報告も十分な販売活動をおこなった最大限の結果であると報告できるため、工場閉鎖など大規模な機械販売においてはこの手法が王道となっています。保守的なヨーロッパでも段々とこの手法が受け入れられつつあり、ゴードン・ブラザーズも含めたプロフェッショナルファームが立ち上がっています。

 

日本やアジア諸国ではなぜ合理的な中古機械市場ができないのか

アジア諸国の中古機械市場では日本製機械の存在が大きく、バイヤーは単なる日本製の中古機械ではなく、日本で使われていた日本製の中古機械を買取ターゲットとしています。

私は数十年前にさまざまな国の工場を訪れていましたが、アジアの国々に有る機械は粗末に使われて、見た目も汚くメンテナンスも酷いものでした。このように酷使された機械を購入するよりは、日本から入ってくる程度の良い中古機械を導入する方が良いという考えもあるようです。

一方アジアには、韓国・台湾・中国製の機械も多数存在し導入されています。日本製の新品価格に対し、半額から3分の2程度の価格で導入できることもあり個体数は多く存在しています。しかしながら、鋳造や組み立て精度が日本製に及ばない為、10年も経たないうちに使い物にならなくなってしまうようで、2-3年程度使われた機械しか中古マーケットは存在してないようです。これらアジアン装置メーカーは、日本の装置メーカーのようには世界的に認知されていないので、日本人や欧米人は中古品の購入を検討する事さえもしません。このようなアジアン装置メーカーの機械が多いので、取引される物量は少なく、欧米と比べ中古市場の規模は小さくなっています。車と同じく機械も ヨーロッパ製>日本製・アメリカ製>アジア製という序列が存在し、中古の流通は日本製・アメリカ製までということのようです。

現在、日本の中古市場を支えているのは、日本経済より活気のあるアジアの方たちです。このコロナ禍の状況下で市場全体が縮小しているなかでも強いのはアジアンバイヤーです。彼らは日本に事務所を構え、機械を仕入して本国へ送っています。それは優良な中古機械が日本にあるからという理由だけではありません。

中古機械の売買において、売主が頭を悩ますのが日本の輸出規制(=輸出貿易管理令)です。武器製造に転用される恐れのある機械を輸出しようとする場合、通常、売主が輸出者責任を5年間負う事になります。新品機械の売買ほど利益の取れない中古機械では、輸出規制に対応するための手続きに時間・費用・人員を割くことは、よほど大きな中古商社しか対応できません。その為日本人以外に機械を売却する場合、国内取引として商いを完結させる事が多いですが、輸出者は日本居住者しかなれません。外国人バイヤーは輸出者責任を肩代わりしてくれる輸出者を探さなくてはなりませんが、成り手を探すのは難しく、時には機械が何年も放置されてしまうということも起こっています。購入した機械を手にすることが出来ないということが起これば、再度日本から機械を買うことを躊躇ってしまうでしょう。輸出規制というハードルも日本の中古市場が活性化しない1つの理由になっています。現実的にはアジアンバイヤーは日本事務所を開設し、自らが輸出者となる事でこの問題を回避しているようです。

GBJが目指す中古機械市場のあるべき姿

日本の中古機械市場が活性化する為には、上記に上げた問題を一つ一つ解決してゆくしかありません。欧米並みの活性化市場を創るため、弊社GBJとしてもその仕組みづくりに日々尽力しています。

基本的な考えは売り手とエンドユーザーを結びつけること、中古機械のサポートが受けられる様にメーカーまたはサードパーティーの理解と協力体制を作ってゆくことであり、ひいては日本市場が欧米市場と融合して市場が拡大していくという事を目指して活動を行っています。

GBJが考える各関係者における改善点は以下の通りです。

  • 売主側の要改善点・年度末などに売却が決まっている機械は、可能な限り早めに外部へ告知して購入者を開拓する時間を作ること。
    ・既存取引先へ見積依頼をするのではなく、同業者も含めた多くの買手候補に告知して購入者を集める。売買サポートを本業とするプロフェッショナルファームに任せること。
  • 中古商社/サードパーティーの改善点・機械査定基準のスタンダードを造り、設備の状態や程度が紙ベースでも分かるようにすること。・売るだけではなく、多少のカスタマイズ対応ができるようエンジニアリング力を更に養うこと。・海外輸出に対する体制作りと業者間ネットワークを構築すること。
  • メーカーの改善点将来の新品機械購入顧客の開拓として、中古機械を購入したお客様に対するサポートを既存客と同等に行うこと。・中古商社を敵視せず、自社ユーザーを開拓してくれるパートナーであると認識を改めること。・中古商社と合同で機械販売会の開催や、サードパーティーエンジニリアリング会社との顧客サポートの相互協力すること。

こうした関係者全員の改善を実現することで社会的なSDGsを達成できるのではないでしょうか。