DATE
2020年12月21日
ゴードン・ブラザーズ・ジャパン リテール
マネージングディレクター 護田 健一
■ はじめに
昨年12月に中国の武漢市で最初に確認された新型コロナウイルスは、2020年世界中に広がり、今なお感染拡大が収まっていない。
帝国データバンクの11/25付発表によると、新型コロナウイルス関連倒産は731件に達した。リーマンショックがあった2008年の倒産件数は1万2,681件、翌2009年は1万3,306件であったが、今年2020年1~10月までの累計倒産件数は6,694件、月別件数でみれば3ヵ月連続、前年同月比で減少している。
新型コロナウイルスの影響が深刻化してきた春頃には、リーマンショック時を上回る倒産が起こるのではと懸念されていたが、2年ぶりに前年比増加に転じた昨年と同等ないしは微増で収まりそうである。
ただしこれはあくまで緊急融資などの様々な支援策によって抑制されているだけであり、コロナ前から業績が苦しくなってきていた企業や、コロナによって起こった消費行動の変化によりコロナ終息後には以前のような収益が見込めなくなる企業など、返済が始まれば一気に倒産に追い込まれる企業が今後増加するだろう。
■ 店舗運営会社が破産に移行した時点での問題点
弊社では在庫の処分業務を請け負っているが、余剰在庫の処分だけではなく、企業の破産時に回収額の最大化を図るべく、弁護士の補助者として在庫処分のサポートも行っている。これまでに様々なケースをみてきたが、特に店舗運営を手掛ける企業が破産に陥った場合には、破産前に相談を受けるか、破産後に相談を受けるかで大きな差が生まれる。
店舗運営を手掛ける会社が破産に至った場合、残った在庫は一括で処分(換価)するよりも店舗で直接消費者に販売したほうが各段に回収額は増加するので、弊社で相談を受けた場合にはできる限り店舗を使った換価手法をとるが、破産後に相談を受けた場合、会社が破産に移行した時点でいくつかの問題が発生してしまう。
① 従業員の雇用
(破産と同時に発生する問題)
店舗営業は停止、また従業員は離散。一旦停止してしまった店舗の再営業には1ヵ月程度の期間を要することが多く、また従業員に期間限定の雇用を打診しても店舗が停止していた期間が長いほど既に程すでに次の職が決まっているケースがほとんどで、新たに店舗スタッフを手配することが必要になる。
(破産前に相談を受けた場合)
破産財団に当面の資金が無かった場合でも、弊社が費用を立て替え既存従業員の継続雇用が可能となる。新たな臨時スタッフではなく、商品のことをよく理解しているスタッフによって営業するので、より効果的な販売が行える。
②物流
(破産と同時に発生する問題)
ネット販売等の物流は一斉に停止され、在庫は物流会社倉庫にて保管される。一旦停止すると、全ての機能を停止させ保管だけする形になり、早急な搬出を求められ、再開が出来なくなるケースがほとんどである。
(破産前に相談を受けた場合)
弊社と物流会社とのリレーションを活用し、破産会社に代わって弊社が契約主体となることで、物流を止めることなく継続して動かすことが可能となる。
③POSレジ/クレジット決済
(破産と同時に発生する問題)
決済会社によって決済機能が一切停止。加えてデータベースの運用も停止になり、POSレジが使用できなくなる。店舗の再オープンに合わせ簡易レジやクレジット決済端末を用意するが店舗数が多い場合には対応にさらに時間を要する。
(破産前に相談を受けた場合)
弊社が保有する簡易レジやクレジット決済端末を事前に手配し導入するため、スムーズな移行が行える。
④ネット販売
(破産と同時に発生する問題)
外部サイトを使用してネット販売を行っていた場合、破産と同時に販売が停止され、在庫が返却される。再開の交渉には時間を要し、販売が再開されるまでに1ヵ月程度要することもある。
(破産前に相談を受けた場合)
弊社自体で各ネット販売会社との契約をもっており、販売主体を弊社に変更することで継続販売が可能となる。
⑤既存店舗の継続/再開
(破産と同時に発生する問題)
店舗が閉鎖され、出店していたテナントによっては直ぐに仮囲いが設置され在庫の保全が行われる。店舗を利用して再販売を開始するには、仮囲いを撤去し、店舗の再造作が必要になる場合もあり、およそ100万円程度の追加費用が発生することもある。
(破産前に相談を受けた場合)
テナント側と事前に調整を行い、継続契約をすることで店舗を閉鎖することなく閉店セールへ移行することが可能となる。
上記のように、破産移行と同時に様々な機能、契約が停止し、再開には多くの手間・時間・費用が発生するが、事前に相談を受ければ様々なノウハウを使って、継続した販売活動を支援することが可能となる。
さらには、既存の店舗だけでは残在庫を売り切ることができないと判断した場合には、弊社の委託先店舗等を活用し、全量を換価=回収額の最大化のサポートを行うことができる。
実際にあったケースでは、破産後に担当弁護士が自力で短期間の閉店セールを実施し在庫を換価しようとしたが、客が殺到しすぎて翌日から従業員が出社を拒否し店を開けられないという事態が発生した。その後弊社に相談がありサポートを行ったのだが検証してみると、短期間での実施だった故に、必要以上の割引がされている在庫もみられた。
破産してしまうと早く精算することが優先され本来の担保価値が発揮できないまま処分されている。できるだけ早く相談を受けられれば、様々な手法の選択の余地もあり、より効果的な換価を行うことができる。今後、破産せざるを得ない企業が増えると見込まれるなか、そのような状況になった時にはどうしたら回収額を最大化できるか思い出してほしい。