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ICT機器のレンタル・サブスクが急増

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DATE
2021年09月16日

GBJアドバイザリーボードメンバー 諸江 幸祐

ICT機器メーカーは好決算

コロナウィルスの世界的なパンデミックは、主要国でリモートワークを促進し、IT関連企業の好業績という副産物をもたらしている。データ通信量が増加するだけでなく、ICTハード機器の需要も着実に上積みされ、主要メーカーは軒並み好決算を発表した。米国政府による規制強化でシェアを落としているファーウェイを除けば、アップル、サムスン電子、シャオミーなど、世界のトップシェア企業の業績は、2020年半ばから急加速。現在進行している決算期、6~9カ月間の業績は、11%~60%の増収、3社とも50%以上の増益となっている。サムスン電子は、半導体供給不安で価格が高騰した影響もあるが、スマートフォンの出荷台数も堅調に伸ばしている。アップルは文字通り、iPhone/iPadの需要増と利益率拡大に支えられ、シャオミーはファーウェイ規制の追い風もあって大幅な増収、増益だ。

 

■ 国内の携帯電話・ICT機器支出は倍増、家計の負担に

国内の携帯電話端末の市場は、いわゆる「ゼロ円端末」問題を経て、2007年と2015年に相次いで端末価格と通信料金の分離・明確化やSIMロック規制の動きがはっきりし、結果、端末の消費金額が大きく拡大した。総務省の家計調査報告によれば、携帯電話の支出は2007年~2015年の全世帯平均2,000円/年程度から、2020年には2倍以上の4,286円/年まで増加した。この傾向は高所得世帯ではより顕著で、2020年の消費金額は7,000円超/年となっている。世帯支出が伸び悩む中で、携帯電話機への支出比率はこの間倍増している。

同じ期間(2007年~2020年)に、パソコンの消費金額も増加しているが、携帯端末の増加幅に比べれば緩やかだ。近年は携帯端末の機能高度化・PC化が進み、1台単価が上昇していることに加え、スマホへの移行加速によって買替え頻度が増していることも、年間支出の増加に貢献しており、この傾向は高額所得者でより顕著である。

また通信費の消費金額は、2015年以降、移動体通信で顕著な増加傾向を見せる一方、固定電話などの通信費用は激減しており、移動体通信へのシフトが鮮明になっている。

■ 欧米の家庭用耐久財レンタル業、ICT製品へ展開急

個人・企業ともに日本よりデジタル化が進んでいる欧米では、携帯電話・パソコンなどのICT機器をレンタルやサブスクリプションで調達する動きが加速している。アプリケーションの多様化、それに伴うデータ容量など負荷の継続的増加で、ハードの買替え頻度が増しているようだ。

米国では、もともとfurnished apartment(家具付き住宅)などの仕組みがあり、家具や大型家電をレンタルで揃える人々も少なくない。耐久財レンタル大手のAaron’sやRent-A-Centerの大手レンタル専門店は、全米に店舗網を構えて年間2,000~5,000億円の売上、5~8%の営業利益率をはじき出している。また自社店舗網だけでなく、他の家具や家電の専門店チェーンにファイナンシャルリースのファシリティーを提供して追加的な収益も稼いでいる。強化中のICT製品も好調だ。

ドイツ企業のGroverは携帯電話やパソコンなどICT製品に特化したレンタル事業を展開する。 取扱商品の構成比はパソコンとスマホ・タブレットが各31%ずつ、ウエアラブルとゲーム機・VR機材が各8%で、80%近くがICT領域だ。株式非公開企業のため財務情報は限られているが、レンタル料金が主体の売上高は、直近の20年9月期で60億円程度。しかし1年間で2.2倍に急拡大している。背景には保存データのクラウド化が浸透し、セキュリティー不安が低下していることもありそうだ。

Groverのレンタルの仕組みは、製品領域ごとに設定された最低レンタル期間に基づいて、月額レンタル制になっており、70%近いユーザーが12カ月間のレンタルを選択。使いでが良かったためか、当初設定したレンタル期間を延長するユーザーも3人にひとりの割合でいる。例えば、新品価格12万円弱のiPhone12を12カ月レンタルしてユーザーが支払う総額は7万円程度。次世代機に切替えるときに既存機を売却することもできるが、手間もかかる。7万円<12万円で常に新機種を使える。一方、Groverは返却された中古品をクリーンアップし、モデル落ちとしてより安い価格でレンタル、もしくは販売することで利幅を広げる。

■ フィンテックファンドが拡大資金を提供、SDGsテーマにも合致

そのGroverが今年7月に10億ドル(約1,100億円)の在庫ファイナンス資金の調達に目途をつけたことが注目を浴びた。同社はドイツ、オランダ、オーストリアの既存商勢圏に加え、スペイン、米国へ事業拡大する目的でエクイティ、在庫担保融資の調達を積極化している。同社は昨年も約2.8億ドルの在庫ファイナンス・ファシリティーを設定しているが、融資資金の出し手になっているのが、フィンテック投融資を強化する新興の銀行やファンドだ。

機関投資家から投資テーマの社会性を問われているファンドとしても、年間1,400トンの電子機器ゴミの削減に貢献しているGroverの成長を支援することは、SDGsの流れに乗れ、資金提供しやすい環境にあるといえよう。