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構造改革を加速させる共同販売スキーム

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DATE
2022年09月09日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン リテール

マネージングディレクター  護田 健一

 

はじめに

米国を始め、諸外国ではCommercial Distribution Financeと呼ばれる手法で、メーカーと卸売業者やディーラーの商流に金融機関が介在することで、メーカーの販売促進ニーズと卸売業者やディーラーの資金調達ニーズの充足が図られています。弊社でもこういった事例を参考に流通小売業向けに新たなスキームを用いて構造改革のサポートを進めています。

昨今のコロナ禍により流通小売業の各企業様から弊社に寄せられる相談も、業界再編(M&A)、事業再生(地方百貨店の再生)、構造改革(ブランドの改廃、統廃合)等と幅広くなっております。特に、構造改革においては、各企業様が市場環境の変化に合わせ資金を主柱の事業に集中させるため、ブランドの改廃および統廃合、グループ企業の再編などの相談を受けるケースが増えています。

 

バランスシートのスリム化

大手企業様から特に多い相談は、在庫の適正化についてです。コロナ禍で各企業様も商品の生産調整をしながら発注をし、在庫の調整をされていますが、上海でのロックダウンの影響や足元の既存販売が鈍る中、思うように収益が伸びず、当期在庫が滞留化してしまう、過年度の在庫処分が益々遅くなる、という傾向を懸念されています。

構造改革(ブランドの改廃、統廃合)の際、各企業様が弊社に求める形は様々ですが企業様のニーズとして、今期の減損はある程度許容するが来期に向けた収益の確保を求められるケースがあります。このような場合、弊社では事業構造改革の一環として以前よりバランスシートのスリム化に向けた滞留在庫を対象としたサービス(共同販売スキーム)を提供しており、これまでにアパレル、服飾雑貨、生活雑貨、キャラクター雑貨等を取り扱う小売・卸売業の企業様が共同販売スキームを導入されました。

共同販売事業を実施する場合、企業様の決算期前に実施するケースが殆どです。バランスシートのスリム化をおこなう上で一番重要な点は、「滞留在庫」のみならず、「滞留在庫予備軍である現在販売している商品」までを処分対象の在庫に加えて、膿を全て出し切ることにあります。在庫処分を中途半端におこなうと、遅々として構造改革が進まず業績回復が遅れる事となります。構造改革の最初の1歩として、倉庫に眠ってしまっている在庫をいち早く処分し、資金化することが重要です。当然企業においては痛みを伴う決断となりますが、早い段階で対策を進めることにより構造改革のスビートが増し、得られる資金を注力すべき主柱の事業へと振り向けることが可能となるのです。

滞留在庫および滞留在庫予備軍のうち一部を切り出して売却するケースがありますが、企業様の計画通りの在庫消化が図れず、1 年後に再度処分の依頼を受けるケースが多々あります。1年後には商品の価値が更に下がり安価な価格での売却を与儀なくされ、結局損失は増加し改革も遅くなります。

さらに、倉庫費用や棚卸の人件費等の固定経費部分も余分にかかってしまいます。これまでたくさんの企業様の倉庫を拝見してきましたが、眠っている在庫の棚卸しに多くの人員を割いているケースがよくあります。これは本当に無駄な費用であり、棚卸しの時間、経費を収益のでる事業に向けるべきです。自社倉庫だからと在庫を溜め込むケースもありますが、在庫を流動化させることで空きスペースの有効活用し、他社に貸し出しする事により収益を生みだす等の改善を図ることも可能となります。

また、企業様自身で滞留在庫処分を進める際、ブランドを毀損してしまうケースも多くみられます。売却価格を優先するばかり本来望んでいなかった商流での販売を余儀なくされるケースや、ブランド毀損を気にするあまり備忘価格にて海外へ売却するケースなどです。弊社が提供している共同販売スキームにおいては、企業様の販路を最大限に活用するためブランドの毀損を最小限にとどめる事が可能です。 

 

共同販売スキームとは

では、共同販売スキームとはどの様な仕組みなのかご紹介いたします。

 

  1. 共同販売とは、弊社で売却希望の対象在庫を全量買取り(=買取ファイナンス)いたします。買取価格はその商品の換価性によって大きく異なり、企業様にて過去既に割引を高く設定されて販売された商品に関しては、その割引販売価格に準じて換価性を判断いたします。弊社が在庫を全量買取りすることにより、企業様のバランスシートから在庫は無くなり、買戻しをして頂くこともありません。共同販売スキーム終了後に消化しきれない在庫が発生した場合は、予め事前に決めた販路にて、全て弊社の負担で販売を継続する形になります。

  2. 企業様の販路を活用しながら在庫削減を行うスキームです。企業様とどの程度の数量、上代金額を販売するかを事前に協議の上、弊社にて販売計画を策定します。企業様がお持ちの販路キャパシティーを分析し、企業様の販路を最大限利用するプランを策定のうえ実行します。

    実行段階においては在庫の規模感にもよりますが、通常6~11ヵ月程度での販売計画を策定し、日々の販売データを共有いただき弊社アナリストが在庫の消化と割引に関して日次でチェックを行います。

    毎週企業様とは定例会を実施し、販売進捗と割引に関して企業様の要望も取り入れながら在庫を消化していきます。在庫の消化においては、適切な割引率の設定が重要となるので、計画したものと消化の進捗に乖離が発生した場合は適切なプライスポイントを探し出し、不用意な割引をしないように細心の注意を払いながら割引を徐々に深め販売価格を変更していきます。弊社の販路は予め企業様と合意したEC販路、弊社受託の閉店セール販路、弊社運営のオフプライスストア「&Bridge」、卸売先等の販路を活用します。

  3.  企業様の販路での販売については委託費用をお支払いします。弊社が購入した商品を企業様の販路で販売頂き、事前に取り決めした委託料率にてお支払いします。販売委託料率は売上に応じ階段テーブルを使用するケースが多く、1.の買取時の価格に応じて販売委託料率の階段テーブルも変動します。

企業様側からみると、共同販売スキームの取組み期初で商品を売却した資金と、自社販路で販売し販売委託料を得る資金の2段階で資金を得ることになります。

平均的な売上構成は全在庫のうち、80%程度を企業様販路で、20%程度を弊社販路で販売がすることが多く、弊社は企業様販路で販売された売上から、販売委託料を回収させて頂くシステムですから、企業様販路での販売において如何に協力して売上増大を図ることができるかがお互いのメリット、利益増収に繋がっていくわけです。

繰り返しにはなりますが、共同販売スキームは取組み期初の段階では大幅な在庫処分損が発生してしまいます。しかしながら、目標とする在庫削減をおこないバランスシートのスリム化をする、ブランド毀損を最小限にとどめる事が企業様の求める正しい姿ではないでしょうか。この共同販売スキームを活用することにより、在庫の健全化、見える化に繋がり、利益を生み出す商品へ資金を充てることが再生への近道になると考えます。